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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)2554号 判決 1978年3月08日

控訴人

斉藤信男

右訴訟代理人

小川休衛

外二名

亡田邊芳太郎訴訟承継人

被控訴人

田邊ハル

外一〇名

右一一名法定代理人

亡田邊芳太郎相続財産管理人

田邊継夫

右訴訟代理人

安藤貞一

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所は、本件配当異議の訴は不適法であり、かつ、原審における訴の変更はこれを許すべきでないと判断するものであるが、その理由は、次に付加するほかは、原判決が理由で説示するとおりであるから、これをここに引用する。

1  原判決四枚目裏一〇行目の「そして、」を、次のとおり改める。

「のみならず、訴の変更の申立にかかる請求の原因と本件配当異議の訴の請求の原因とでは、執行債権の不存在ということでは共通するが、訴変更の申立にかかる請求においては、執行債権の不存在についての芳太郎の故意、過失、一審原告の被つた損害額およびその因果関係など、配当異議の訴の請求の原因とは異なる主張事実の重要な部分について、さらに主張・立証を必要とするものであつて、しかも、かかる主張事実は、本件配当異議の訴の提起当時から存在すべき性質のものであるという事情に徴すれば、たとい前示のように執行債権の不存在ということについて、両者に共通のものがあつたとしても、前述した経緯をしんしやくすれば、果して両者の請求の基礎に同一性があるといえるかどうかについて、疑問がないわけでもないのである。このような事情とともに、」

二当審における追加的請求について

当審は、一審における訴の変更を許さず、かつ、本件配当異議の訴を不適法として却下した訴訟判決に対する控訴審であつて、一審判決を取り消す場合においては、事件を第一審裁判所に差戻さなければならない(民訴法三八八条)のであり、当審において、請求について、実体上の審理・判断をすることは、予想されていないものである。(本件控訴は、前記のとおり理由がない。)

仮に、当審において、民事訴訟法二三二条の規定による訴の変更(追加的請求も、もちろん同条による訴の変更にあたる。)を許容するとすれば、追加的請求について、当審において実質上の審理・判断をするか、または、これを一審に差戻ないし移送するかのいずれかとなろうが、前者とすれば、前述した訴訟判決に対する控訴審の審理構造に背反し、一審についての審級の利益をなんらの事由もなく失なわせることになり不当というべきであるし、後者とすれば、そのまま事件を第一審裁判所に差戻しまたは移送すべく、わざわざ、控訴審において、右請求の当否の判断を示す限りではない。このように考えると、右のような訴の変更は、訴訟判決に対する控訴審においては許されないものと解するのが相当である。

そうだとすると、当審における訴の追加的申立(予備的申立をも含めて)はすべて、その余の点にわたつて判断するまでもなく許されないというべきである。

以上述べたとおり、本件控訴は、理由がないから、これを棄却することとし、なお、控訴人の昭和五一年二月一八日付および同五二年五月九日付各準備書面による訴の追加的請求はこれを許さないことにするが、理由中の判断にとどめることとし、控訴費用の負担について、民事訴訟法八九条、九五条を適用し、主文のとおり判決する。

(荒木秀一 中川幹郎 奈良次郎)

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